「欲望と幻想の市場」図書返却のため抜粋

副題: 伝説の投機王リバモ

 世界的なコロナ対策でさらなる低金利と金余りから鉄火場となる可能性がある株式市場。本書で投資と投機の差異が再確認できたように思う。

 ジェシー・リバモア(1877-1940)は、当初は空売りを得意とし、のちにトレンドフォロー戦略を取り入れた投機家(相場師)であるが、その物語(フィクション)となる本書の出版はなんと1923年。15歳で最初の差金決済取引で$3.12儲け、1897年にはNYSEで株取引を開始した(ちなみに、投機対象銘柄のうち、アメリカン・シュガーはダウ12銘柄の一つであった。)。4度の破産を経験、晩年はうつ病を患い、ピストル自殺を遂げた。

  • 株というものは、買い始めるには高すぎるということはないし、売り始めるのに安すぎるということはない」→株を投機と見れば合点がいく。
  • 「綿花では損が明らかだったのに損切らず、小麦は益が見込めたのに手仕舞ってしまった。投機で損失を難平することほど愚かな振る舞いはない。損が明らかな時には損切り、利益が見込める時には利喰わないことだ。」→投資ならナンピンもあり?といえるのではないか。
  • 「商品相場は究極的には唯一、需要と供給の経済原則によって支配されている。だから、商品のトレーダーは、現在と将来の需要と供給を正しく見極めるだけでいいのだ。」→株式は需給によって決まらず、適正な価格は存在しない。
  • 「投機家は投資家ではない。投機家の目的は高い利回りで確実な利益を求めることではなく、相場の上昇または下落に乗って利益をあげることにある。」
  • 「価格変動は、相場が過去の観察から得た前例に従って動くのか否かという判断基準で考えることができるものだ。もしある株がその基準通りに動かなったら、その相場には手を出さないことだ。なぜなら、何がおかしいかを明確にできなければ、その相場がどう進むのかも判断できないからだ。分析なきところに予測はない。そして予測できなければ、相場に勝つことはできないのだ。」
  • 「いかに状況判断は正しくとも、相場が予測された通りに動くまでに時間がかかる場合、どうしても疑念が生じ、辛抱できなくなるというのが人間の本質だからだ。」「自分の信念の通りに行動する勇気のみでなく、むやみに手仕舞わない賢明な辛抱強さを兼ね備えていた。」→長期ホールド予定の信越化学株に対して目先の利売却してしまったような愚は今後避けたい
  • 「強気相場では、株を買って後は上昇局面がそろそろ終わると確信する時まで持ち続けることが肝要だ。」
  • 「相場全般の状況を研究し、ポジションを取ったらむやみに動かないこと。」
  • 「弱気相場の時には影響を与えるはずのニュースでも相場に影響を与えないことがある。その時の相場の雰囲気次第なのだ。」
  • 「上昇相場で買うのが最もスムーズな買いのタイミングだ」「ポイントは、いかに安値で買うとか高値で売るとかというようなことではなく、いかにして最適のタイミングで売買するか、ということだ。」「もし弱気筋となって売りに出る時は、売りは常にその前の売りよりも低い相場で、そう、追撃して売らなければならない。そして買いの局面ではその逆が当てはまる。つまり上昇の流れに従って買いを進めていくべきなのだ。ロング・ポジションは、相場の上昇にともなって買い乗せていくべきなのだ。」
  • 「明白なのは強気相場では強気筋、弱気相場では弱気筋になれということだ。」
  • 信じたいと当人が思っていることを信じる性質とか、いかに簡単に自分の欲望や不注意に影響されるか」「恐怖と希望という感情はいつの時代でも不変であり、だからこそ投機家の心理を研究するのが昔も今も重要なのだ。」
  • 活況相場は人々の欲望や僥倖感に煽られたギャンブル志向でさらに膨らむ。安易に儲けようとする者は皆、そんなことはありえないということを身をもって知らされる羽目になる。」
  • 「強気相場、特に好況時には人々はまず利益をあげるものの、その後適当な時期に手仕舞いしないことで儲けを逃してしまう。」